通称使用MAX拡大で見えてくるもの ──「姓」とともに生きるための現実的提案

たぶんですけどね

選択的夫婦別姓をめぐる議論は、いまもなお答えが出ていません。制度導入を望む声がある一方で、「夫婦は同じ姓であるべきだ」という価値観も根強く、社会は分断されたままです。

しかし、実際にはその間に広がる“現実的なニーズ”が見え始めています。各種世論調査では、約3割の人が「夫婦同姓を維持しながら、旧姓使用の拡大を望む」と答えており、また約4〜5割の人が「どちらでもよい」「柔軟な対応が望ましい」としています。

この声に応える方法が、「通称使用のMAX拡大」です。

社会的コストの視点から考える

まず、選択肢として並ぶのは次の2つです。

  • 選択的夫婦別姓を制度として導入する
  • 現行制度のもとで、通称使用(旧姓使用)を最大限に拡大する

選択的夫婦別姓には、民法・戸籍法の改正、戸籍システムの改修、社会的理解の醸成など、導入時にかかるコストが大きい。一方で、制度として一貫性があるため、長期的には合理的とも言えます。

一方、通称使用の拡大は法改正が不要で、すぐにでも取り組めるという意味で初期コストが圧倒的に低く、実用的な一歩になりえます。ただし、戸籍上の氏名との二重構造をどう扱うか、本人確認、相続、海外渡航などの面で整理と対策が求められます。

短期でやる。責任を持ってやる。

重要なのは「短期スパンで、責任ある運用を前提に実行する」ことです。

例えば、以下のようなスケジュールで動かすことができます。

スケジュール案(3年)

フェーズ目的備考
準備フェーズ(2025年度内)行政と社会の下準備ガイドライン整備、マイナンバー連携など、制度導入せずに運用の基盤をつくる年。
実装フェーズ①(2026年)公的文書での通称使用を社会に浸透させる学校や保険証、マイナンバー、住民票など「国民に近い領域」からスタート。
実装フェーズ②(2027年)実務的な障壁を把握し、広範な分野での実装促進銀行・医療・海外対応といった“本丸”へ。制度化が必要かどうかの分水嶺になる段階。
検証フェーズ(2028年初頭)本当に「通称」で十分だったかを社会的に評価ここで初めて「制度化の是非」が論点化される。

説明責任のある運用を

大切なのは、「やらなかったこと」にも責任を問える仕組みです。

各省庁・自治体・企業には、通称使用の対応率を数値目標として提示し、未対応の場合は「なぜできなかったのか」を説明する責任を課す。これは努力義務ではなく、“事実に基づいた報告義務”です。

なお、こうした「責任ある運用」を本気で実行するにあたり、すでに国会で提案されている維新案(通称使用の制度的拡充)をこのフェーズに採用するという考え方もあります。

維新案では、旧姓使用の拡張を法律上明文化し、住民票やマイナンバーカードなどでの通称併記を制度として整えることが提案されています。 法制度の大改正を伴わずにすぐ実行できるため、この“運用フェーズ”の政策ツールとして活用するのは理にかなっています。

ただし、この段階で「もう全部解決した」として制度改革を打ち切るのではなく、あくまで「試してみる」「検証する」ための一手段として位置づけることが大切です。

この運用を3年間、本気でやりきることができれば、私たちは次の問いに、社会全体として答える準備が整うはずです。

「それでも、制度が必要だろうか?」

最後に──制度は、現実の後からついてくる

姓はアイデンティティであり、家族の象徴でもあります。だからこそ、議論が感情的になりやすく、二項対立に陥りやすい。でも、社会が求めているのはもっと地に足のついた話です。

通称使用の本気の拡大は、制度改革のための“リトマス試験紙”になります。

この小さな実験の積み重ねが、誰かの違和感や生きづらさにきちんと応える制度に、つながっていくことを願ってやみません。

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参考資料

・NHK世論調査(2023年)「夫婦別姓に関する世論調査」
・内閣府「家族と法制度に関する世論調査」(2022年)
・朝日新聞 世論調査(2021年3月)「選択的夫婦別姓制度への賛否」
・読売新聞 世論調査(2021年)「家族観と戸籍制度について」

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