喧嘩のあとに、何を問い直せるか
喧嘩には「勝った方」も「負けた方」も、どこかに後味の悪さを残すことがあります。
たとえ自分の正しさを証明できたとしても、それが相手を納得させるとは限りません。
では、喧嘩を“しない”ことが正解なのでしょうか?
そうではありません。
意見の違いや緊張が生じること自体は避けられませんし、むしろ必要な摩擦とも言えます。
問題は、その摩擦が「ただのぶつかり合い」で終わってしまうことです。
今回は、「問い」を使って、喧嘩を超えるための語り方について考えてみます。
閉じる問い vs 開く問い
前回の記事では、小西洋之氏や米山隆一氏の語りにおける「問いの構造」が、喧嘩を生む原因になることを見てきました。
「議員やめたらどうですか?」「左様なら。」といった語りは、問いのかたちをしていながら、実際には相手に答えさせない問いでした。
では、それとは対照的な「開かれた問い」とは、どのようなものでしょうか。
【比較表】問いの設計による関係のちがい
| 閉じる問い | 開く問い | |
|---|---|---|
| 目的 | 相手の矛盾を暴く | 相手の考えを深める |
| 主語 | 「あなたは?」 | 「わたしは…あなたは?」 |
| 誘導性 | 高い(結論ありき) | 低い(可能性を差し出す) |
| 相手の動き | 沈黙、防衛、反発 | 応答、内省、発展 |
| 結果 | 対立・断絶 | 対話・更新 |
たとえば、次のような問いは、閉じた議論をひらく小さなきっかけになります。
- 「どうしてそう考えるようになったんですか?」
- 「それって、どこかで自分も似た経験があるかもしれません」
- 「もしかしたら、私の見方にも偏りがあるかもしれません」
こうした問いは、相手に「話していい」と思わせる語り方です。
喧嘩を乗り越えるための「問い」のデザイン
喧嘩を避けるのではなく、「問い方」を変えることで、その後の関係をつくり直すことができます。
ポイントは以下の3つです。
① 相手の論理ではなく、経験に問いかける
「それを主張するに至った背景には、どんな経験があったんだろう?」と考える問いです。
経験には物語があり、物語には共感の余地があります。
② 自分の立場を先に開示してから問う
「私はこう感じています。でも、あなたはどうでしょうか?」というスタンスは、相手の“防御”を緩めます。
これは、正しさではなく“関係”の設計です。
③ 沈黙や迷いも「応答」として受け入れる
すぐに言葉が返ってこないことを“拒絶”と捉えるのではなく、「考えてくれている時間」とみなすことで、問いがより深い理解へつながります。
喧嘩のあとに、語りは更新できる
喧嘩の直後、すぐに対話を回復するのは難しいかもしれません。
ですが、そのあとに「問い直す」ことはできます。
- 「あのときの言い方、きつかったかもしれません」
- 「あなたの意図、もう一度聞かせてもらってもいいですか?」
こうした語り直しは、単なる“謝罪”や“正当化”とは異なります。
それは、語りのリセットではなく、語りの更新です。
喧嘩のあとに、「問い」が残る関係。
それこそが、壊れない対話のかたちかもしれません。



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