対立は、すれ違いではなく「語りのズレ」から始まる
あれ、なんで喧嘩になったんだっけ?
上司と部下、親と子、友人同士。
「なんであんなに険悪になったんだっけ?」と振り返っても、原因がよくわからない喧嘩、誰しも経験があると思います。
言ったことと言われたことが食い違っている。
なのに、どちらも「自分はちゃんと伝えた」と思っている。
──そう、喧嘩の出発点には、“通じなさ”があります。
ただのすれ違いではなく、「通じているはず」だったのに通じなかったという裏切りの感覚。
そして、通じないまま語りが加速し、相手を「分かってない奴」とラベリングする。
この連鎖の爆発点が、“喧嘩”なのです。
喧嘩はなぜ爆発するのか──構造を見てみよう
たとえばこんな会話:
- 上司A:「最近、ちょっと当事者意識が足りないように感じるな」
- 部下B:「は? 私なりにちゃんと考えて動いてますけど」
- 上司A:「いや、そういうことじゃなくて…」
- 部下B:「じゃあ何が言いたいんですか?」
このやりとり、構造を分解するとこうなります。
| フェーズ | 実際に起こっていること | 誤解・ズレ |
|---|---|---|
| ① 提示 | 上司:「当事者意識が足りない」 | 具体性がない主観的評価 |
| ② 反応 | 部下:「ちゃんとやってる」 | 自分の努力を否定されたと受け取る |
| ③ 追加 | 上司:「そういうことじゃない」 | 曖昧な否定が続くことで怒りが増幅 |
| ④ 防衛 | 部下:「じゃあ何が言いたい?」 | “伝わってない”ことへの苛立ち |
この例の本質は、「言葉の内容」ではなく、「語りの構え」が噛み合っていない点にあります。
語りの構えとは何か?
「語りの構え」とは、その人が前提としている前向きさ、批判性、期待感などのスタンスです。
- 上司は「育てよう」という期待から、抽象的なフィードバックを選んだ。
- 部下は「信頼されたい」という不安から、防御的に反応した。
ここに共通するのは、語りの目的が明示されていないこと。
期待なのか、注意なのか、評価なのか、問いかけなのか。
それが曖昧なまま進む語りは、通じなさを生み、やがて爆発します。
喧嘩は「通じなさ」が“裏切り”に変わる瞬間
もっとも厄介なのは、どちらも「自分は誠実だった」と信じていることです。
「ちゃんと伝えたつもりだった」
「そんなふうに受け取られるとは思わなかった」
この“つもり”のズレを言語化せずに放置すると、
「悪意がある」「馬鹿にされた」といった感情にジャンプしてしまう。
つまり、喧嘩とは、通じるはずだった人に通じなかったときの、信頼が踏みにじられたような感覚なのです。
小さな「問い」が喧嘩を防ぐ
これに関連して、次のような記事も準備中です。
・なぜ“正しさ”が対立を生むのか?
・どうすれば通じる語りができるのか?
今回のまとめとして、ひとつ提案をしておきます。
それは、「問い返す習慣」です。
たとえば、「当事者意識が足りない」と言われたら、
「どの場面でそう感じましたか?」
と具体的に掘る問いを返す。
問いがあることで、語りは対話として設計し直せるのです。
喧嘩の原因は“人間関係”ではない
「この人とは合わないから」とあきらめる前に、
語りの設計を見直してみること。
喧嘩の原因は性格の不一致ではなく、語りの構えの不一致かもしれません。



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